不妊治療のタイミング法と人工受精を実際に行った体験談

晩婚化が進む中、卵子の老化や男性不妊、排卵障害など様々な問題によって不妊に苦しむカップルが増加しています。

不妊症のカップルに最初に立ちはだかる壁が、不妊治療を始めるかどうかです。

検査をしても異常が見当たらないことも多いため、経済的な理由や治療への恐怖心から不妊治療に進めずにいる方も多くいらっしゃいます。

私の場合は明確な原因があったため、結婚から半年で不妊治療を開始しました。しかし、不妊治療を始める時も不妊治療中も、常に様々な悩みを抱えていました。

今回は、不妊治療を始めるにあたって悩みを抱えている方の参考になれればと、私の不妊治療体験談をお伝えします。

不妊治療に至った経緯

まずは、私が不妊治療に至った経緯をお伝えします。

20代でチョコレート嚢胞の手術を受ける

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私は生理も順調で、生理周期がずれたことすらありませんでした。そのため、まさか自分が不妊症になるなど20代後半になるまでは思ってもいませんでした。

ただ、生理は定期的にきちんときていたものの、毎回辛い生理痛に悩まされていました。

生理1~3日目までは鎮痛薬を規定量以上飲んでも痛みは治まらず、生理中はずっと寝込むのが当たり前でした。

今思うと、この時点で婦人科に行っておけば子宮内膜症の悪化を防止できたのかもしれません。

26才の時、突如不正出血に襲われたため、婦人科を受診して検査をしました。

そこで発覚したのが、がん化の恐れもあるほどの大きなチョコレート嚢胞です。チョコレート嚢胞とは、卵巣に子宮内膜症ができてしまい、月経の度に卵巣の中に血が溜まってしまう病気です。

チョコレートのような血が溜まることからチョコレート嚢胞と呼ばれています。

チョコレート嚢胞は放置しているとがん化の恐れもある上、卵巣の茎捻転や破裂のリスク、卵子の質の低下などを起こす可能性があるため、ホルモン治療と並行して手術を行うことになりました。

子宮内膜症は、卵巣や子宮、周辺臓器の癒着の原因になるため、手術の際に子宮内膜症への処置や卵管が通過するかどうかも確認してもらいました。

手術は成功し、卵管の通過性も確認できましたが、手術後は左の卵巣が確認できないほど小さくなってしまいました。

つまり、左卵巣からの排卵を諦めざるをえなくなったのです。

病気が発覚してから手術が成功しても、私は妊娠が難しくなったのだという絶望感にうちひしがれていました。

実際に主治医に確認したところ、35才までに妊娠しないと難しいと言われ、泣いたのを覚えています。

常に不妊への恐怖と闘っていた独身時代

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健康な女性よりも妊娠しにくいというハンデは背負ったものの、諦めずに結婚するまではディナゲストと呼ばれるホルモン剤を用いて子宮内膜症の治療に取り組みました。

当時ディナゲストは新薬で薬価も高く、副作用も非常にきつい<ものでしたが、当時の私は「できる限り妊娠の可能性を高くしたい」という気持ちで続けていました。

しかし、医師に告げられた35才というラインが私には大きなプレッシャーとなっており、「早く結婚しなければ妊娠できない」という不妊への恐怖と焦りを常に感じていました。

不妊かもしれないことを了承してもらい結婚

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パートナーと出会ってからは、病院でしっかりとケアしていたこともあり、不安は少し和らぎました。

しかし、婚約してから数ヶ月経った時に、血液検査の数値が悪くなってしまったのです。これは、子宮内膜症の再発の可能性を意味していました。

つまり、不妊へのフラグがまた立ち始めたのです。

夫は以前から子供を切望していたため、事実を告げて、結婚するかどうかの選択を相手に託しました。
夫が、不妊かもしれないことを了承してくれたため、結婚に踏み切ることができました。

この時点で、結婚後は早い段階で不妊治療に取り組むことを話し合っていました。

結婚後半年で不妊治療を開始

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医師にできるだけ早く妊娠した方がいいと言われていたため、結婚が決まってからすぐに子作りを解禁しました。

この時は妊娠したいという気持ちが強かったため、生理日付近になるといつもつわりや妊娠初期のような症状が出て、想像妊娠に苦しみました。

自然妊娠の希望を捨てられずに半年間頑張ってみましたが、妊娠することはありませんでした。

結婚以前から不妊治療について話し合っていたこともあり、結婚後半年経った段階で不妊治療を開始する覚悟ができました。

まずは近所の通いやすい不妊治療専門クリニックの門を叩きました。

経済的にも苦しくて生活するのに精一杯な状態でしたが、幸いにも当時暮らしていた地域では一般不妊治療から助成金が出るため、踏み切ることができました。

助成金の有無は不妊治療開始への大きな後押しとなるため、お住まいの地域の情報を収集することをおすすめします。

不妊治療には大きく4種類がある

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不妊治療は、一般不妊治療と高度生殖医療(ART)の2つに大別されます。

一般不妊治療に該当するのは、次の2つです。

  • タイミング法
  • 人工受精

一方で高度生殖医療は次の2つが該当します。

  • 体外受精
  • 顕微授精

不妊治療は、明らかな問題がなければ経済的にも身体的にも負担の少ないタイミング法から始めます。その後、半年を目安に人工受精、体外受精、顕微授精へとステップアップしていきます。

現在の不妊治療は、2年以内で成果が出るようにプランニングするべきだと言われています。

私の体験談の前に、まずはそれぞれの不妊治療の概要について以下にお伝えします。

タイミング法

不妊治療クリニックに行くと、まずは基本的な異常がないかどうか男女ともに検査を行います。

この検査で大きな異常が見られなかった場合、一番始めに行われる治療がタイミング法です。

タイミング法では、排卵日を推定して最もベストなタイミングで夫婦生活をとり、妊娠率の向上を図ります。

タイミングは排卵検査薬でとることも可能ですが、病院ではより高い精度で排卵日を推定することができます。

費用

費用は、1周期あたり1~2万円程度となります。

人工受精(AIHまたはIUI)

タイミング法を半年程度行って効果が得られなかった場合、人工受精にステップアップします。

人工受精では、パートナーから精子を採取し、子宮内に精子を人工的に注入して受精率の向上を図ります。

費用

費用は、1周期あたり2~3万円程度となります。

体外受精(IVF)

タイミング法と人工受精では、精子と卵子の受精は体内で行われます。

高度生殖医療に分類される体外受精はこの点において大きく変わります。

体外受精では、女性の卵巣から成熟した卵子を外に採り出し、男性から採取した精子と培養液中で受精させます。

その後、何日か培養した受精卵を胚移植によって子宮内に戻します。

費用は病院や採卵した数によって大きく変わります。

費用

20万~80万円に排卵誘発剤などの処置料も含めると100万円を超える場合もあります。

顕微授精(ICSI)

顕微授精は体外受精の手法の一つです。

基本的には体外受精の方法と変わりませんが、受精方法に大きな違いがあります。

体外受精では培養液中で自然に受精させるのに対し、顕微授精では顕微鏡下で卵子に人工的に精子を注入します。

受精障害や精子が少ないケース、卵管閉塞やピックアップ障害を抱えるカップルに特に有効となる治療方法です。

費用

体外受精でかかる費用に加えて、胚移植費としてさらに10万~20万円程度かかります。したがって、100万円に近い費用がかかります。

タイミング法の治療法

病院で行うタイミング法は、超音波検査によって卵胞の大きさを観察しながら、尿中または血液中の黄体化ホルモンやエストロゲンの量を測定して排卵日を推定します。

スケジュールとしては、生理開始から10~11日目頃に病院を受診し、卵胞の大きさと黄体化ホルモンの量をチェックします。

卵胞の成長具合によって、翌日や2日後に再受診して、卵胞の状態を観察します。

卵胞が18mm以上に成長したら、タイミングの指示が出されます。

病院の方針や患者の状態によって、排卵誘発剤を使用し、排卵の誘発やコントロールを行います。

さらに、着床できる環境が整っているかどうかを確認するためにも、妊娠維持に必要なプロゲステロンの量を排卵から7日程度経過した段階で測定します。

タイミング法の体験談

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私は2ヶ所のクリニックでタイミング法を行いました。

クリニックの方針によってタイミング法であっても、治療内容は大きく異なります。

不妊治療で成果を出すためには、クリニック選びも重要な要素だと強く感じています。

まずはそれぞれのクリニックの体験談をお伝えします。

タイミング法の内容と薬の副作用

初めて受診したクリニックでは、まず始めに不妊に関する基本的な血液検査を行いました。

不妊治療を始める少し前に夫婦ともにクラミジアの感染が発覚したため、不妊治療クリニックではその旨を伝えて陰性判定されるまで夫婦生活をとることに不安を感じると相談しました。

しかし先生は、二人とも抗生物質を飲んでいるなら問題ないとおっしゃり、すぐに不妊治療の開始を進められました。

ここで少し不信感を抱きましたが、先生を信じてその日からタイミング法を始めることにしました。

治療は、排卵誘発剤の一種であるセキソビットを服用して排卵をコントロールし、超音波検査とホルモン値の測定によって排卵日を推定し、タイミングをとる日を指導されるという形で進んでいきました。

副作用があっても取り合ってもらえず

排卵以降は、デュファストンと呼ばれる黄体ホルモンを補って妊娠しやすい状態を作る薬を服用しました。
ここで大きな問題に遭遇しました。

セキソビットやデュファストンなどのホルモン剤が体に合わず、ひどい倦怠感や憂鬱感、気分の悪さに襲われるようになったのです。

このクリニックでは副作用を訴えても、気のせいだと言われて取り合ってもらえませんでした。

1回のフーナーテストで診断されてしまった

さらに悪いことに精子の状態を検査するフーナーテストで精子の動きが悪いことが分かったのです。

フーナーテストとは、性交を行った3~5時間後に子宮頸管にいる精子の数や状態を観察する検査です。

フーナーテストの結果は、検査した日によって大きく変わるため、正確さに欠けるという欠点があります。

実際に2回目の検査では精子が元気よく動いていたため、男性不妊の問題は解消されたと診断されて、それ以降は夫側の検査が行われることはありませんでした。

2回目のタイミング法で妊娠するも流産

事務的に進められる不妊治療に少し不安は抱えていましたが、幸いにも2回目のタイミング法で妊娠することができました。

しかし、喜びもつかの間胎児は育たずに流産となってしまいました。

流産は当日麻酔なしでの手術となり、その痛みと恐怖から大きなトラウマが残りました。

初めての体験でしたので、これが普通だと思っていたのですが、後々、麻酔なしで流産の手術をするのは考えられないと他のクリニックの看護師さんから聞きました。

流産という切迫した状態であっても、しっかりと知識を持って受けることが重要だと感じています。

流産後体調が悪化し不妊治療を中止

流産後はおよそ1ヶ月程度で生理が再開し、再開すると同時に不妊治療も再開しました。

しかし、体が戻っていなかったのか通常の生活ができないほど体調が悪化してしまいました。

薬をお休みしたいと主治医に相談しましたが、関係ないと言われ、何の検査も行うことなくセキソビットとデュファストン、hCGの注射を使用した治療が淡々と行われました。(hcg注射とは、ヒト絨毛性ゴナドトロピンというホルモンの注射で、34〜36時間後に排卵します。)

あまりにも体調が悪くなり、病院への不信感も募ったため、いったん不妊治療を中止することにしました。

転院先のクリニックで検査の重要性を知る

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体調も回復したため、クリニックを変えて不妊治療を再開しました。

そこでは、以前通っていたクリニックと全く異なる治療が行われたので、大きな衝撃を受けました。

まず、転院先のクリニックでは、夫とともに詳しい検査が行われました。

転院先のクリニックは、不必要な薬を使用せずに不妊の原因をしっかり追求して、そのカップルに合った治療を行うことを方針としていたのです。

卵管の詰まりや卵管周辺の癒着状態を調べることができる卵管造影検査の結果、チョコレート嚢胞の手術による卵管の癒着が発覚し、卵子をピックアップしにくい状態であることが分かりました。

さらには、子宮内膜症の悪化や妊娠の妨げとなるプロラクチン値の異常、不妊の原因となる甲状腺の機能低下など様々な問題が浮き彫りになりました。

先生はセキソビットやデュファストンなどの薬を使わずに、発覚した問題に対処するための薬剤や処置を丁寧に説明しながら行ってくれました。

また、精液の検査によって夫の精子の量と運動率が極めて悪いことも分かったのです。

以前のクリニックでは、一度フーナーテストで良好な結果が出たため、男性不妊の問題は放置されてしまっていました。

今回の転院で、検査が不妊治療においていかに重要なのかが理解できました。

ただし、検査が多くなり細かい治療が行われる分、費用面では2倍近くのお金がかかります。

月に1万円程度の機械的な不妊治療を受けるか、月に2~3万円かかっても自分に合った不妊治療を受けるかの選択になります。

私の体験からは、しっかりと検査を行ってくれるクリニックをおすすめします。

それは、不妊治療自体が辛い治療であるため、精神的な負担を軽くするためにも信頼できるクリニックに通うことが重要だと感じているからです。

人工受精の治療法

人工受精は、以下のようなケースで有効となります。

  • タイミング法を半年行っても成果が出ない
  • 精子の動きがやや悪い
  • 精子の量がやや少ない
  • ED(勃起不全)などによってタイミングをとることができない

人工受精を始める前は、肝炎やエイズなどの感染症がないか確認します。問題がなければ人工受精に進むことができます。

人工受精では、まずタイミング法と同様に排卵日の特定を行います。排卵日が推定できたら、人工受精を行う日程を決めます。

当日は、男性から精子を採取して濃縮・洗浄を行い、精子の調整液を作ります。精子が調整できれば、内診台の上でカテーテルを用いて調整した精液を注入します。

人工受精においては、妊娠率を高めるため経口の排卵誘発剤やhCGの注射を用いるのが一般的となっています。

人工受精の体験談

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現在私は、人工受精にまでステップアップし、体外受精を検討している最中です。

人工受精になると精神面でも変化があります。

また、費用や痛みなど心配な面もあると思いますので、できるだけ詳しくお伝えします。

人工受精にステップアップした経緯

2番目に通院したクリニックで、前述したように卵管の癒着の問題や精子の量と質の問題が明るみになりました。

特に精子の問題は深刻だったため、先生からは体外受精もしくは顕微授精でないと妊娠が難しいと言われました。

しかし、経済的にも余裕がなく、体外受精への恐怖があったため、まずは人工受精で様子を見ることに決めました。

人工受精の内容と痛みについて

人工受精では、私は生理周期が22~25日と短いため、セキソビットを服用して排卵のコントロールを行いました。

超音波検査によって排卵日を推定できたら、人工受精の予約をします。

小さなクリニックや人気のクリニックではベストなタイミングで予約が取れず、1周期を無駄にしてしまうことがあるため、注意してください。

実際に私が通っているクリニックでも、患者さんが多いため、人工受精を断られた周期もありました。

無事に人工受精の予約ができれば、人工受精の前日に念のため卵胞の状態を観察し、当日に挑みます。

人工受精当日は、朝に夫が精子を採取し、クリニックに持っていきます。

その後、精子の調整のために90分ほど待機します。精子が調整できたら、内診台で卵巣の最終確認を行い、細長い管がついた注射器で精子の調整液を注入します。

注入するために子宮を固定する器具をつけるのですが、その器具をつける時のガチャガチャという音さえ我慢すれば、痛みもなく人工受精を終えることができます。

痛みの点では、人工受精は安心しても大丈夫でしょう。

精子注入後は内診台が上がったまま5分間安静にし、その間に先生から精子の状態についての説明を受けます。

その後さらにベッドに移動して30分安静にし、妊娠率を高めるためにhCG注射を打って帰宅します。hCG注射は痛いですが、数秒程度の痛さなので我慢はできます。

ただ、私の場合、だるくなるなどの副作用が出るため、hCGを打つ日は仕事を入れないようにしています。

帰宅後は、2日間抗生物質を服用し、合計3回hCGの注射を打つために通院し、妊娠しやすい状態を整えるために人工受精の2日後からデュファストンを10日間服用しました。

体調的には、hCG注射による倦怠感と人工受精当日の子宮が収縮するような腹痛を感じる程度です。

人工受精とタイミング法の精神面での違い

人工受精は体外受精などとは異なり、それほど高い妊娠率を誇る不妊治療ではありません。

しかし、精子に問題があるカップルではタイミング法よりも有効となるため、どうしても期待が高まってしまいます。

期待が高まる分、成果が出ずに生理がきてしまった時は「これでもダメなのか」という大きな落胆や絶望感を感じてしまいます。

私もデュファストンを飲み終わってから4日目に生理がきました。

すぐに生理がこなかったこともあり、期待が高まった分大きな喪失感に襲われてしまいました。

私の体験からも人工受精を受ける時は、期待しすぎないようにすることが精神面を保つためにも重要だと感じています。

人工受精の費用

人工受精の費用は、目安として2~3万円と言われています。しかし、2~3万円というのは人工受精の処置料です。

人工受精にはその他にも感染症の検査や薬代、精液の検査、超音波検査の費用がかかります。

私の経験では、合計すると1周期で5万円程度は必要になります。

男性不妊専門クリニックへの受診の重要性

最後に男性不妊専門クリニックの受診の重要性について触れさせていただきます。

現在私は不妊治療を休止しています。

それは、夫の慢性前立腺炎が発覚したためです。

夫が血尿と高熱を出したため、男性不妊も診ている泌尿器科を受診したところ、慢性前立腺炎の急性増悪だと診断されました。

さらには、男性不妊の原因も前立腺炎からきていることが分かったのです。先生の話では、前立腺炎を治療することで精子の量と質も改善することができるとのことでした。

泌尿器科の先生には、男性不妊が分かった時点で受診すべきだったと怒られてしまいました。精子に問題がある方は、夫のように影に病気が隠れていることもあります。

男性不妊を指摘された方は、不妊治療のためにも泌尿器科や男性不妊専門クリニックを受診することをおすすめします。


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